「不動産情報サイト アットホーム」をはじめ、不動産に関わるさまざまな情報サービスや業務支援システムを展開するアットホーム株式会社。同社は「調和・科学・倫理」という強固な行動基準を掲げ、時代に調和した最先端の技術を実務に取り入れる風土を大切にしてきました。近年、生成AIの進化が加速度的に進む中、同社はいま、個人の生産性向上という枠を飛び越え、組織全体の変革、そして「事業価値の向上」へ向けた大規模な挑戦を進めています。全社規模でのリテラシーの底上げと、実務での高度活用を牽引する人材育成を目指し、同社が2026年1月に発足した「AI活用推進プロジェクト」の強固な基盤となったのが「SIGNATE Cloud」でした。1,800規模の全社員の生成AI教育を3カ月で完成させた、事務局メンバーに綿密な戦略と行動力、そして、そこでSIGNATE Cloudが担った「実践力定着」の仕組みについて、紐解いていきます今回、ビジネスデベロップメント本部でプロジェクトを統括する取締役副本部長の田中さん、事務局として現場の旗振りを担う小出さんに、この熱い取り組みの舞台裏とそこから生まれた成果についてお聞きしました。(写真左から、小出さん、田中さん)導入背景:全社展開を阻む「二極化」の壁と、人材育成を支える2つの軸―― まず、貴社内で「AI活用推進プロジェクト」が立ち上がった経緯を教えてください。田中: 当社には、紙のメディアからデータへとシフトしてきた歴史があり、行動基準にある「科学(最先端の技術をどれだけ取り入れられるか)」を常に追求する文化があります。部分的なAIの研究や活用は以前から進んでいたのですが、生成AIの波が来たとき、社内全体を見渡すと、個人的にハッカソンのように使いこなしている先進的な社員がいる一方で、「何から始めればよいかわからない」「情報漏洩などのリスクが怖くて触れていない」という社員も非常に多く、活用レベルの二極化が顕著な課題になっていました。小出: 私は2006年に入社して以来、営業や営業所長を歴任してきた現場出身なのですが、2022年のChatGPT公開時にものすごい衝撃を受け、個人的に生成AIの持つ無限の可能性に強く惹かれました。その後、社内のデジタルイノベーションプロジェクトに参画し、営業現場の泥臭い業務改善に取り組む中で確信したことがあります。それは、全社員のAIリテラシーを底上げする「オールラウンド(広く浅く)」の教育と、実務で圧倒的な付加変化を創出する「狭く深く」高度な人材育成、この2つの軸を同時に、しかも本気で回していかなければ組織は絶対に変わらないということでした。田中: 生成AIの急速な進化を前にして、「これは一過性のブームではなく、完全なる業務改革、そして事業変革のチャンスだ」という強い確信がありました。そこで、全社員の基礎力向上と高度活用を牽引する人材育成を目的として、プロジェクトを発足させました。全社展開を進めるにあたっては、単なる座学の知識習得ではなく、リスクや限界を正しく理解しながら、実際に手を動かして実務に活かせる「本物の実践的な学習環境」を求めて、外部ベンダーの選定へと動き出しました。選定理由:「知っている≠できる」の壁を越える、SIGNATE Cloudの「実務直結の学び」―― 複数のサービスを比較検討される中で、なぜSIGNATE Cloudを選ばれたのでしょうか。田中: 私たちがベンダー選定において最も妥協しなかったのは、「受講して終わり」の動画視聴型ではないこと、そして「実際に手を動かせる実践の仕組みがあること」です。私は前職の銀行員時代や、当社の地盤である営業本部での業務改革(BPR)の経験を通じて、「知っていること」と「実際にできること」は全くの別物であり、知っているだけでは現場の成果には1ミリも繋がらないと骨身に染みていました。動画を見るだけのeラーニングは世の中に溢れていますが、それでは実務に落とし込めずに挫折してしまう。その点、SIGNATE Cloudはアセスメントテストによって受講者のリテラシーやスキルを客観的に可視化でき、事務局としても進捗を定量的に管理しやすい仕組みが抜群でした。ここなら、私たちの教育コンセプトである「オールラウンド(広く浅く)」を強力に支え、一人ひとりの現在地に応じた最適なスタートを切れると直感したんです。小出: 加えて、導入の決定打となったのは、現場目線に徹底的に寄り添った『生成AI業務効率化コース』の存在でした。このコースには「営業」「企画」「事務」など、全社員に受講させるうえで幅広く、かつ具体的なケーススタディ教材が最初から網羅されていたのは、非常に大きかったですね。実際に、ただAIの仕組みを一般論として学ぶのではなく、「自分の日常業務のあの作業に、あのプロンプトを書くと生成AIを思い通りに活用できるのでは」と、実務に落とし込みしやすかったと思います。ケーススタディ教材の一例さらに、AIのメリットだけでなく、ハルシネーション(AIの嘘)や情報漏洩などのリスク・限界についてもケーススタディ教材を通して「手を動かしながら体感して学べる」構成になっていたため、当社が重視していた基準にも完璧に合致していました。これらのようなSIGNATE Cloudの「学びと業務のつなぎ合わせの強さ」こそ、1,800名規模の全社教育において、全員の実務活用力を一気に引き上げるために、理想的なサービスだと確信し、導入を決意しました。課題解決:500人のアンバサダーによる「密着フォロー体制」―― 1,800名を超える全社展開を進めるにあたり、事務局として特に注力されたポイントを教えてください。田中: 当社はここ数年で、社員数が1,200人から1,800人規模へと急拡大しました。組織がこれだけ大きくなると、トップがいくら「生成AIを活用しよう」と言っても、役職を経て下へ降りていく途中で伝言ゲームになってしまい、一番大切な「熱量」や「ニュアンス」が途中で変わったり冷めたりして伝わらないという強い危機感がありました。現場へその熱量をダイレクトに波及させるため、「6〜7人の最小チーム」の中で、実際に話の中心となって熱量を広めてくれる仲間が必要だという結論になり、立ち上げたのが公募制の「AIアンバサダー」制度です。難しい知見を求めるのではなく、「一緒に面白いことをやろう」とハードルを極限まで下げて全社から募りました。田中: そして、この現場の熱量を日常業務へ確実に、かつ半ば強制的に落とし込むために私たちが仕掛けた最大の「覚悟」が、人事評価制度との連動でした。当社では、賞与評価や年1回の賃金改定に関わる人事評価(能力加算評価やスキル評価など)の中に、生成AIの活用度を明確な指標として組み込みました。単に「ツールを使ったら褒める」というレベルではなく、「これからのビジネスにおいて、生成AIを使わないこと自体が明確な機会損失であり、社員を誰一人として時代の変化から置いてけぼりにしない」という、経営陣としての退路を断った『覚悟』の表れなんです。綺麗事や楽しさだけでは、どうしても「今は忙しいから」と逃げてしまう層が出てくる。全社員が圧倒的な当事者意識を持ち、「自分事」として生成AIに向き合わざるを得ない環境を本気で作るための、愛のある仕掛けです。成果と変化:愛される「いえまる」が繋ぐ社内コミュニティと、クリエイティブ部門77%削減の衝撃―― 評価制度という強固な仕組みの一方で、社内の心理的ハードルを下げるためにどのような工夫をされましたか?小出: 田中が「評価」という最強の仕組みを作ってくれたからこそ、私は「楽しさ」の側を徹底的に極めようと考えました。 まず、社員が自由に成功事例やプロンプトのノウハウを投稿できる自社内の「ナレッジシェアコミュニティ」を構築しました。さらに、そのコミュニティに親しみを持ってもらうために、生成AIを活用したオリジナルキャラクターとロゴのコンテストを社内で開催し、全社員による投票を実施したんです。そこで選ばれたのが、マスコットキャラクターの「いえまる」でした。圧倒的なとっつきやすさが、社員の心理的ハードルを極限まで下げてくれました。―― 素晴らしいコミュニティですね!具体的な実務での成果はいかがでしょうか。田中: SIGNATE Cloudを導入したことで、社員の意識は「難しそう」から「まずは業務で使ってみよう」へ確実に変わり、日常的な利用率は大幅に増加しました。共通の言語や用語が社内に浸透したことで、ボトムアップのコミュニケーションも非常に活発になっています。 そして、具体的な数値効果として最も衝撃的だったのは、当社のクリエイティブ(製造)部門における成果です。実務のソースコード生成等にAI(Claude Codeなど)を導入したところ、検証期間わずか3ヶ月で、最大77%のコストおよび時間の削減を達成したという驚異的なデータが記録されました。小出: 単に「研修を受けて終わり」にせず、SIGNATE Cloudのケーススタディ教材で実務の手応えを掴んだ上で、ナレッジシェアコミュニティで「これだけ業務が楽になった」「こんなプロンプトで時間が浮いた」という生々しい成功事例を泥臭く共有し合っていったからこそ、実務への即効的な変化へと繋がったのだと確信しています。今後の展望:効率化の先へ――事業価値を高め、未来のビジネスを創る組織へ―― 素晴らしい成果を収められた今、今後の人材育成やAI活用の展望についてお聞かせください。田中: 今回の取り組みによって、全社員が共通言語を持ち、「生成AIを当たり前の業務ツールとして触る」という基礎的な土壌は完全に定着しました。しかし、私たちの本当の挑戦はここからです。業務効率化や生産性向上という殻を破り、その先にある「事業価値の向上」、そして「お客様への提供価値の向上」を実現し、確固たる事業成長へと繋げていかなければなりません。小出: 一過性のブームに終わらせないために、今後は新入社員や中途入社社員の研修としても、AIリテラシー教育を標準の育成仕組みとして組み込んでいきます。さらに、社内に蓄積された膨大な知見や、ベテラン社員の持つ暗黙知のノウハウをAIに学習させ、業務知識がまだ浅い若手層への教育や知識継承を劇的に効率化するような、次なるステージのAI活用プログラムにも挑戦していきたいと考えています。田中: 加えて、SIGNATEさんは他社のDX担当者や、同じようにAI活用を最前線で進められている企業同士の「交流会・意見交換会」を主催されているとお聞きしました。 他社様がどのような泥臭い施策で組織の壁を乗り越え、どう生成AIを実務に適用しているのか、その生の事例やナレッジに触れることは私たちにとって計り知れない価値があります。お互いの知見が交わることで、当社にとっても凄まじい刺激とシナジー(知見の結合)が生まれるはずです。そういった先進的なコミュニティには、私たちもぜひ積極的に参加したいです。―― ありがとうございました。ボトムアップの熱いコミュニティと、人事評価という強固な仕組み、そしてそれを裏支えしたSIGNATE Cloudが見事に融合したアットホーム様の取り組みは、組織の本気度が伝わる素晴らしい事例だと感じました。田中さん、小出さん、熱い想いの詰まった素晴らしいお話をありがとうございました!