あらゆる技術の進歩に伴い、社会の変化もそのスピードを増し続けている。その中でも、特に変化が大きいのがモビリティ業界だ。サステナビリティへの意識は年々高まり続け、環境保全の視点が強く求められている。加えて、シェアリングサービスの台頭や、ビッグデータを活用した自動運転技術等、ニーズは複雑化の一途を辿っている。こうしたモビリティ業界と深く結びついているのが、ブリヂストンの主要事業であるタイヤビジネス。目まぐるしく変わる市場に対応するために、製造業からソリューションプロバイダーへの進化が必要となるが、ソリューションビジネスを展開するために高いレベルでデータ活用できる人財が必要不可欠だ。デジタル人財の育成が同社の今後を左右すると言える状況の中で導入されたのが、SIGNATEの提供するeラーニング「SIGNATE Cloud」だった。果たして、どんな魅力を感じて採択を決めたのか、そして導入後の現在、どのような手応えを感じているのか。デジタルAI企画開発部にてデジタル人財育成コンテンツの企画開発を担当する岩﨑さんに、率直なお話を伺った。研修の目的を定め切らなければ、コンテンツの設計などできない—— 「SIGNATE Cloud」の導入を検討した背景を教えてください。データの活用は、以前から社内でも行われていました。ただ、統計的な品質管理等、一部の業務で限定的に活用する程度。しかし、会社が製造業からソリューションプロバイダーへの変革を掲げ始めたのを機に、もっと大々的にDXを推進していく必要が出てきたのです。またそれに合わせて、2017年にはデジタルソリューションセンターが設立されました。人財育成に本腰を入れることとなり、そのミッションを任されたのが、ちょうど同年に現部署へ異動してきた私だったというわけです。具体的なミッションは、デジタル人財育成のための研修コンテンツを考えるというものでした。そうは言っても、私自身もプログラミングやAIについて本格的に学んだことのない初心者。理系出身ではありますが、学んできたのは工学分野ですし、前の部署での担当も設備開発。イロハもわからない中で、どう進めればいいものか正直困惑しました。まず取り掛かったのが研修のゴール設定。研修を通じて、どんな技術を身につけて欲しいのか。どんな知識を学んで欲しいのか。データサイエンティスト協会のスキルチェックリストを参考に、必要なスキルやレベルの大枠を固めました。ただ、このチェックリストはあくまで汎用的なスキルリストでしかなく、弊社の研修に落とし込むには、実際の業務に紐付いていなければ意味がありません。社内有識者の力も借りながら、「ブリヂストンにおける必要なスキルセット」という観点で調整していきました。このゴール設定を間違えると、研修のコンテンツが全てズレてしまいます。そのため、この工程が一番のポイントだと考えて、3ヶ月ほどかけて入念に設計しました。必要な部分は外部の専門家に頼る方が効率的—— そのような課題を抱えるなか、導入検討が進んだきっかけは何でしたか?研修のゴール設定をした後、ようやくコンテンツ設計に着手。必要なスキルを、必要なレベルまで習得するためにはどんなコンテンツが必要か、逆算しながら設計していきました。ただ、全てをゼロから自分たちだけで作っていったわけではありません。以前から部署ごとに導入していた外部研修もいくつかあったので、その中で有用なものを組み込みながら、足りないところを内製した形です。現場の課題と接続するようなコンテンツは社内でしか設計できませんし、専門的な部分は外部の専門家に任せた方がいい。その中で取り入れた外部研修のうちの一つが、SIGNATEさんのeラーニング「SIGNATE Cloud」です。「SIGNATE Cloud」を導入するきっかけになったのは、きちんとPythonを学んで欲しいという想いです。弊社の社員はAIリテラシーが特段高いわけではないので、以前から行っていた研修はGUIツールをベースにしていました。ただ、昨今のAI活用の流れを踏まえると、Pythonの習得が現場でのデータ活用の近道になると考えて、AIプログラミングのスキルを学べるコンテンツを探していました。他にも多くのeラーニングサービスがある中で、なぜSIGNATEさんを選んだのかというと、私自身がユーザーとして利便性を感じていたからです。正確に言えば、私が体験したのはSIGNATEさんのeラーニングではなくコンペティションだったのですが、これがとても勉強になりました。コンペ形式の利点は、すぐにフィードバックがもらえること。自分なりに工夫を施して投稿すると、その場でスコアが返ってきます。どこをどう変えたら良くなった、もしくは悪くなったという結果がすぐにわかるので、PDCAを回し続けることができます。さらに順位を競うので、ゲーム感覚でも楽しめる。こうした魅力的なサービスを提供しているSIGNATEさんのeラーニングも素晴らしいものだろうと思ったのが、興味を持ったきっかけでしたね。初学者にも寄り添った丁寧なコンテンツ、そして理論と実践のバランス—— 最終的に「SIGNATE Cloud」を選んでいただきました。決め手は何でしたか?興味は持ったものの、「SIGNATE Cloud」の利用経験はなかったので、まずは限定的にトライアル申込みをすることに。私も受講したのですが、期待した通り満足のいく内容でした。特に良かったポイントは、受講者に寄り添って、ステップバイステップで成長を感じられるようになっていたこと。他のeラーニングでは、説明用動画を視聴して、あとは問題を自分で解いてね、というものも多いです。しかし「SIGNATE Cloud」の場合、問題文も最初は簡単な単語の部分が空欄、次は一行が空欄といった形で難易度が調整されていて、初学者でも流れに沿って学ぶことができ、少しずつ確実に成長していける構成になっていました。弊社ではプログラミングに苦手意識がある社員もいるので、こうした丁寧なコンテンツはありがたかったです。他にも、プログラミングの基礎からAIについて周辺知識まで広く網羅している点も、現場で活用できるスキル習得という観点で弊社の研修に最適だったと思います。さらに、テキスト形式とワーク形式の課題が織り交ぜられていて、理論と実践どちらもバランス良く学べる点も魅力的だったので、迷いなく導入を決定することができました。研修運用面でも少し工夫を施しました。「SIGNATE Cloud」での研修修了後に、社員が学んだ内容を活かして、社内にある業務課題を実際に解決できるか発表する場を設けたのです。何度も言うようですが、あくまで目標は現場で活用できるスキルを習得すること。学んで終わりではなく、学んだことを現場で活かすところまでやり切れるような研修にこだわりました。研修と社内コンペの組み合わせで、人財発掘から育成まで—— 「SIGNATE Cloud」を導入いただいて、どのようなときに効果を実感されましたか?「SIGNATE Cloud」を導入した研修は、第一期生が6月に研修修了。受講者からは「何度も復習したいから期間を延長してほしい」「この研修を同僚にも紹介したい」等の嬉しい反応をもらっています。ただ、まだまだ磨き込む余地はあります。弊社のデータを使った課題を設計して、より現場に即した学びを実現したり、受講者自体をもっと増やしたりと、やりたいことは盛り沢山です。現在は全社員を対象に、希望者へ受講を案内しているのですが、受講希望者を増やすために、社内のプライベートコンペティションを実施しています。データサイエンスに興味を持ってもらうことを目的に、SIGNATEさんの力を借りて開催したところ、第一回にして約90人が参加。投稿件数は800件にも及ぶなど、想定以上の反応がありました。しかも優勝者は研修の第一期生だったので、研修の学びを確かめる場としても機能してくれているように思います。また、直接的にAIを使う機会の少ない部署の方も入賞していたりして「この人もスキルを持っているのか」と人財発掘にも繋がっています。今後も研修と社内コンペを有機的に結びつけながら、人財を発掘し、育成し、現場で活かすという流れを加速させていきたいですね。内製化と外部委託をうまく組み合わせることが重要—— ありがとうございました。最後に「SIGNATE Cloud」を検討している企業へのメッセージをお願いします。私たちもそうだったのですが、内製化する部分と外部に委託する部分をうまく組み合わせることが重要だと思います。実際の社内事例に沿ったコンテンツは外部では準備できません。しかし、ここが一番受講者の興味を惹きやすく、現場での活用にも繋がるポイント。自社のリソースはそこにフォーカスしながら、汎用的なスキルのインプットは上手く外部を活用するのが効率的だと思います。※掲載内容は取材当時のものです。