日立建機は1950年に機械式ショベルの量産を開始して以来、70年以上にわたって人々の暮らしを支える製品を生み出し続けています。現在、「真のソリューションプロバイダー」としての新たな成長を目指し、お客さまに寄り添う革新的なソリューションの提供、アフターサービスから部品や機械本体の再生、レンタル・中古車といったバリューチェーン事業の拡充、米州事業の拡大を核としたグローバル事業の伸長、そして組織力の強化を経営戦略の柱に据え、「第2の創業期」とも言える挑戦を始めています。日立建機の新たな挑戦の要となるDX人財の育成、全社的なDXリテラシーの底上げに取り組む人財本部人財開発統括部の山田部長代理と佐藤主任のお二人にお話をお伺いしました。DXリテラシーの底上げから、実践的なDXスキルの習得フェーズへ(画像右)人財本部人財開発統括部 部長代理 山田様(画像左)人財本部人財開発統括部 主任 佐藤様——はじめに、これまでの貴社のDX人材育成の取り組みについて教えてください山田:当社では、「モノ売り」に留まらない、「コト売り」としての事業展開を推し進めています。単に機械を販売して終わりではなく、その後も顧客に寄り添い、ソリューションプロバイダーとしての価値を提供することが当社の目標です。その実現に向け、デジタルをどう活用していくかは重要なテーマとなっています。実は2000年ごろから、機械にセンサーを取り付けて稼働データを蓄積する取り組みを進めていましたが、当時は特定の部門だけで完結していました。しかし、新車販売だけでなく、アフターサービス、再生、レンタル、中古車の買取・販売など、バリューチェーン全体でデジタルの導入を推進していくためには、全社員がDXに対する意識を持ち、データを活用できる環境を整える必要があります。佐藤:このような状況を踏まえ、まずはデジタルに対する抵抗感を減らし、一定の理解を持つ社員を多数育成することが重要だと考えました。そこで、DXに対するマインドセットやアーキテクチャーの考え方、基本的なデータの取り扱いなどデータ分析の基礎を学ぶ『デジタル基礎研修』を、マネージャー層から主任層の約半数(約1000人)に受講してもらいました。ほかにも、部門を横断した4〜6人のチームによる『デジタルチャレンジプログラム』を展開し、各ビジネスの課題解決に向けたプロトタイプ構築にも取り組みました。山田:その『デジタル基礎研修』が一通り終了して、デジタルに対しての理解が浸透してきた段階になったので、次はもう少し専門的・実践的なスキルの習得を目指そうと考え、今回新たなコースの企画に着手しました。——スキル習得をめざすにあたって、どのような研修を企画されたのでしょうか山田:研修を考えるにあたって、まず日立グループがもつスキルのカテゴリーを参考に各部門長にヒアリングを実施しました。その中で、データサイエンティストとプロジェクトマネージャーの人数を増やす必要があるという課題が見えてきたんです。そこで、これらの人財を育成するための研修コースの検討を進めることにしました。佐藤:2024年度は、受講者が自分の希望に合わせて選択できるよう、データサイエンティスト育成研修とプロジェクトマネージャー育成研修のそれぞれに「資格コース」と「eラーニングコース」の2つのコースを用意しました。eラーニングコースのうち、データサイエンス領域で『SIGNATE Cloud』を採用し、86人の方が受講を希望してくれました。山田:当初はIT系の部署の方が多いと予想していましたが、実際には幅広い部署からの応募がありました。資格コースは今まで馴染みがないとハードルが高かったようですが、『SIGNATE Cloud』のeラーニングは基礎知識がなくとも自分のペースで取り組むことができるという点でたくさんの方が応募してくださったのだと思います。今回学んだ方が今後、さらに上のレベルへ挑戦してくれることを期待しています。——このコースを設計されるにあたって、『SIGNATE Cloud』を選んだ理由を教えてください山田:まず、単なる動画視聴ではなく、実際に手を動かしながら学べる点が魅力的でした。また、アセスメントを通してスキルがスコア化され、受講者個々人の弱点が明確になった上で、それに合わせた講座が推奨される仕組みも非常に良かったですね。さらに、Excelで出来る範囲の内容から取り組めるため、データ活用初心者でも挑戦しやすい部分も評価ポイントでした。でも実際に募集をしてみると、Pythonに挑戦したいという方も結構いたんですよね。結果的に、ExcelとPythonの受講比率は6:4くらいでした。佐藤:今回は初回だったこともあり、「このような研修を待っていました!」というモチベーションの高い方や、すでにそれなりのスキルを有する方が多く集まりました。ただ、来年度以降はその傾向にも変化が出てくるかもしれません。山田:導入にあたって他にも何社か検討はしたのですが、『SIGNATE Cloud』のような形式で学習できるものは見当たりませんでした。また、レベルを「基礎 → 実践 → 発展」と分けたとき、今回は実践レベルの教育だけを対象にしていたのですが、基礎レベルの内容も一緒になっているところが多く、実践レベルが独立していて特化しているものもなかったです。その点でもあまり迷うことなく『SIGNATE Cloud』を選定することができました。「6割以上が目標点超え」を目指して、積極的なフォローを実施——みなさんの研修の取り組み状況はいかがでしたか?山田:まず、スタートにあたって、我々の中では「受講者の6割が、アセスメントテストで600点以上を達成する」というKPIを定めました。当初はどのような指標が適切なのかわからなかったので、学習時間をKPIにしようと考えていたのですが、SIGNATEの営業担当の方から、「『SIGNATE Cloud』は実際の理解度がテスト結果に反映されるので、スコアを指標にして学習効果を追いましょう!」とご提案いただきました。確かに、時間だけだと動画を流しただけで勉強したことになりますが、それは必ずしも結果とは連動しないですよね。佐藤:研修開始前には、SIGNATEのカスタマーサクセスの方に「受講者向けガイダンス」をご実施いただきました。説明会で「ゲームみたいで面白そう」と興味を持ってもらえたのも、受講者のやる気に繋がった一因だと思います。研修が始まってからは、600点を超している方、超していない方の状況を定期的にご報告いただきました。こうしたサポートをいただきながら「あともう少しで600点!」といった励ましのメッセージやアドバイスを事務局からも定期的に送り、途中でペースが落ちやすい期間は特に頻繁に受講者とのコミュニケーションを図りました。山田:あと、『SIGNATE Cloud』の受講者はTeamsでコミュニティを作りました。同じ目標で勉強する方たち同士が繋がるのはとても良かったですね。「これってどう使うの?」といった個別の質問などが飛び交って、みなさんワイワイやっていました。▲実際の投稿の様子佐藤:一方で、『SIGNATE Cloud』はただeラーニングで講座を見るだけではなく、テスト受検➡現状のスキル把握➡弱点克服という新しい学習の流れなので、そのやり方に慣れるまでに時間がかかる方もいました。そういう方に向けて「苦手分野を克服してもう一回テストを受けましょう」というアナウンスなどもしました。特に最初の1ヶ月、2ヶ月くらいは頻繁に発信をしていましたね。山田:研修期間中は、管理画面に表示されていない数値なども把握したいとか、こういったデータはありませんかといったことをSIGNATEさんに相談させていただいたのですが、「これどうですか?」とすぐに対応していただき、さすがデータサイエンスの会社だなと思いました。いろいろな要望を真摯に受け止めていただいてありがたかったです。『SIGNATE Cloud』は一人ひとりの学習状況を、事務局からも受講者からも把握しやすい点も印象的ですね。ベースができている人はさっとクリアできますし、逆に何十時間、何百時間も勉強して頑張っている方の足跡も管理画面で見られる。満点を目指すというのは大きな目標ですが、始めたばかりの方や、もう少し手前の目標で頑張っている方などは、ただ動画だけを見ているとその成長の実感が得られないことが多いと思います。でも、例えば「テストの結果が500点だったのが600点になった」みたいなところが可視化されるというのは、受講者側のモチベーションにつながりますし、何時間やってここまで来たということがわかると、「こんなに頑張ったんだ!」って手応えを感じられますよね。ですので、今回の研修が終わった後のスコアが、結果的には600点を越していなくても、自分が学んできた成果が見えるというのは意味があることだと思っています。今回の成果を、実務での活用を見据えた次の一歩へつなげる——振り返って、今回の研修の結果はどのように評価されていますか?山田:結果としては、7割の受講者が二つのアセスメントで600点をクリア、さらに満点獲得者も3人いました。(※SIGNATE Cloud『データ処理・読解スキル計測テスト』における満点獲得者は、全受検者の約0.5%ほど)こういうeラーニングは、どうしても時間がなくてできなかったという方も多くて、他の研修だとやり切る方が半分以下だったりするんですよね。そう考えると、『SIGNATE Cloud』の場合は7割が目標のスコアを超えていますので、皆さん相当頑張ってくれた印象です。佐藤:一方で、もともと意識の高かった方はあっという間に終わってしまったという印象があるので、次回は上位層向けのメニューも用意して、今回クリアした方を対象にやってみてもいいかなと考えています。その上のレベルに入ると、かなり実践と繋がってくる部分が出てくるのではないかと思います。山田:今後は「学びが業務にどう活きたか」の把握にも注力したいです。業務改善に繋がったという話は聞こえてきているのですが、どんなことに活用できているのかをもう少し深く追っていきたいですね。そのために、受講後半年ほど経った段階で受講者や各部門にアンケートを実施するなど、成果を可視化できる施策も検討しています。この取り組みの背景には、ソリューションプロバイダーとしてデータをもっと活用してサービスを作っていくという大きな目標があるので、裾野を広げて底上げすることと、学びを業務でのアウトプットに繋げていくことの両軸が必要だと考えています。佐藤:当社には個人が勘や経験に基づいて仕事をしているような文化もまだ残っているのですが、私たちは社員みんながデータに基づいて判断や意思決定ができる組織を目指しています。スキルを習得した社員が増え、データを活用した業務改善や新たなサービス創出などの取り組みが社内の各部署から自然に生まれてくるような状態まで持っていきたいですね。山田:現状は、ソリューションプロバイダーを目指すとか、お客様に革新的なソリューションを提供するといった大きな目標は出ているものの、そのためにデータサイエンスのどのレベルができる社員を何人育てる必要があるのか、そういう議論はまだできていません。ただ、それを待ってからでは遅いので、まずできるところから先手を打って始めている状況です。今回の研修で成果が出たことで、次年度以降の取り組みを計画するうえでも、より具体的な方針を立てられそうです。※掲載内容は取材当時のものです。