AI技術の進歩は目まぐるしく、今や職種や業界を問わず、あらゆる場面でDXの推進が叫ばれるようになって久しい。中でも、AIの最新技術への対応を強く迫られているのがIT業界だ。そして、日本オープンシステムズも、その例に漏れない。オープンシステムに特化して、システム開発や運用、各種ソリューションの提供を行う同社には、事業運営に関わるあらゆる課題の相談が寄せられる。その中には、各種業務の自動化による作業効率の向上も含まれる。そして、それはまさにAIが真価を発揮する領域。「AIが活用できないのでその課題を解決することができません」ではITのスペシャリストとして話にならない。変化し続ける顧客のニーズに対応し続けるためには、AI人材の育成が急務であり、同社のAIプロジェクトは、このような背景のもと始動した。その中心人物である北陸第二システム開発部部門長の帯刀達志さんに、AI人材育成への取り組みや、その一環で導入を決めたSIGNATE社のeラーニング「SIGNATE Cloud」についての感想、導入における工夫点を伺った。実績がないと実績をつくれない、というジレンマからの脱却—— 「SIGNATE Cloud」導入以前に抱えていた課題を教えてください。そもそものきっかけは、4年ほど前だったと思います。今でこそ、当たり前のように至る所でDX推進の声を聞きますが、当時はAIやIoTという言葉が市民権を得はじめた時期で、当社にもお客様からAIを用いた開発の相談される機会が多くなってきていました。AIに関わらず、それまでも最先端技術を使ったソリューションの相談はありましたし、それらには問題なく対応してきました。ただ、AIは少し話が違うのです。何が違うかといえば、実績が求められる点です。これまでの技術のバージョンアップではなく、革新的な技術というイメージが強いのか、お客様から「AIを用いた似たような実績はありますか?」と毎回のように聞かれるのです。どうやらAIに関しては、これまでのノウハウだけでどうこうできるものではないと感じました。このままではいつまで経ってもその実績をつくれず、それにより同業他社から遅れを取ってしまう。当社のプレゼンスが低下する危機感を持つようになり、正式にAIへ対応していく流れとなりました。私が所属している北陸第二システム開発部が、社内でも比較的新しい取り組みを担う組織で、AIに関しても私たちが中心に進める暗黙の了解のような雰囲気がありました。私自身も現場に出る中、お客様からのAI導入の要望に応えきれていないモヤモヤを抱えていたため、部署として、個人として、本腰を入れて取り組むことにしたのです。手を動かさないことには、知識が血肉となっていかない—— AI人材育成サービスを検討するポイントは何でしたか?AI人材を育成するには当然、私自身も一定の知見を持っていなければいけませんが、当時の私はAIのイロハもわからないような状態でした。そこで、まずは自分が勉強するところから始めました。書籍やeラーニングを活用しながら学習を進め、日本ディープラーニング協会が主催する『G検定』や『E資格』も独学で取得。社外の研修も受講しました。そんな初心者がAI人材育成を任されて大丈夫なのかと思うかもしれませんが、これが逆に功を奏した部分もありました。それは、初心者の気持ちがわかるということ。AIに関する知見を持っていない当社の多くの社員がAIの学習を進めていく上で、躓きやすいポイントはどこか、どうすればモチベーションを維持できるか。受講者側の気持ちを自分自身が学習を進めていく中で体感できたので、学ぶ側の目線に立って育成を考えられるようになりました。SIGNATEさんのeラーニング『SIGNATE Cloud』の導入を決めたことも、自分の学習体験に基づいています。書籍やネット、eラーニングに研修と様々な学習を取り入れた中で気付いたのが、手を動かさないと身につかないということ。どれだけ知識をインプットしても、自分の手を動かしてアウトプットしないことには、すぐに抜け落ちていってしまう。知識が自分の血肉になっていかないんです。これはAIに限ったことではないと思います。実際に、日々の業務でも部下たちには、「どれだけ手を動かすかが大事だ」と伝えています。数多くの資格を持つ知識豊富なエンジニアより、十数年コーディングし続けて、数多くのプロダクトをつくってきたエンジニアの方が成果を出せるんです。そうした、実際に手を動かす経験、つまりアルゴリズムやモデルを組んでいくワークが豊富に組み込まれている『SIGNATE Cloud』こそ、学習に最適だと感じました。初学者にも寄り添った丁寧なコンテンツ、そして理論と実践のバランス。—— 最終的に「SIGNATE Cloud」を選んだ決め手は何でしたか?興味は持ったものの、「SIGNATE Cloud」の利用経験はなかったので、まずは限定的にトライアル申込みをすることに。私も受講したのですが、期待した通り満足のいく内容でした。特に良かったポイントは、受講者に寄り添って、ステップバイステップで成長を感じられるようになっていたこと。他のeラーニングでは、説明用動画を視聴して、あとは問題を自分で解いてね、というものも多いです。しかし「SIGNATE Cloud」の場合、問題文も最初は簡単な単語の部分が空欄、次は一行が空欄といった形で難易度が調整されていて、初学者でも流れに沿って学ぶことができ、少しずつ確実に成長していける構成になっていました。弊社ではプログラミングに苦手意識がある社員もいるので、こうした丁寧なコンテンツはありがたかったです。他にも、プログラミングの基礎からAIについて周辺知識まで広く網羅している点も、現場で活用できるスキル習得という観点で弊社の研修に最適だったと思います。さらに、テキスト形式とワーク形式の課題が織り交ぜられていて、理論と実践どちらもバランス良く学べる点も魅力的だったので、迷いなく導入を決定することができました。常に学び続ける必要があるAI学習は、強制では上手くいかない—— それ以外に、導入の決め手はありましたか?ワークが多いだけでなく、初学者に優しいコンテンツ設計になっていたことも導入の決め手になりました。先ほどもお話しした通り、弊社の社員のほとんどがAI初学者でしたので、前提知識のインプットや、それを用いた課題が細かくステップを切る形で構成され、ゼロベースでも無理なく学べる『SIGNATE Cloud』は弊社の状況に非常にマッチしていました。—— eラーニングを導入するうえで、工夫されたことがあるそうですね。導入するeラーニングの選定とともに工夫したのが、運用の部分です。実は、受講対象を希望者のみに絞ったんです。社内に広くAIスキルを浸透させる意味では、全社員に受けさせた方がいいかもしれません。なぜ、希望者のみに絞ったのか、それはこのeラーニングを導入した目的にあります。このコンテンツでAI人材として必要なスキルを全て身につけてもらうのではなく、この機会をAI学習のきっかけにしてほしい。そんな思惑がありました。どんな学習でも、強制されてやらされても続かないと思います。自分が興味を持って、やりたいと思って取り組んでみる。その結果、もっと興味が湧いてもっと学んでみる。そうしたサイクルを回すことで、継続的な学習へと繋がっていく。その入り口として導入したのが、『SIGNATE Cloud』。だから強制ではなく、興味を持って手を挙げた人にのみ門戸を開くことにしたんです。特にAI領域は技術進歩のスピードが速い分、継続的な学習が特に重要となる分野。そうした意味でも、強制するのではなく、内発的なモチベーションを持ってもらうことが大事ではないかと考えています。次なる課題は、学習時間の確保をいかにサポートするか—— 「SIGNATE Cloud」を導入いただいた効果はいかがですか?希望者のみ受講させる運用方法は、アンケート回答にその成果が表れています。回答者の全員が、『SIGNATE Cloud』が参考になったという前向きな回答でした。具体的には「オンラインなので隙間時間を活用して効率よく学習を進められる」「カリキュラムが終わった後も、不安なところは気軽に復習できるのが良い」等の声が寄せられました。また、参加者の中には営業職も混ざっており、エンジニアでなくても学習に取り組めることが確かめられたのも大きな成果だと思っています。—— 今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?一方で、まだ課題もいくつか残っています。例えば、学習時間の確保。全員興味を持って前向きに取り組んでくれていたものの、カリキュラムを最後まで完遂できなかった社員も一定数いました。せっかく前向きに参加してくれているので、「毎週この決まった時間は自己研鑽の時間に充ててよい」というような制度を作る等、会社としても時間を確保する何らかのサポートができればと考えています。また、学習内容のレベルアップも検討しています。今回導入したコンテンツは初学者向けのもの。受講した上でさらに知識と興味を深め、もっと学びたい社員向けに中級者向けの教材を提供できるよう準備を進めているところです。レベルを上げたeラーニングでもいいですし、合宿形式の研修でもいいかもしれません。形式には縛られずに、最適なコンテンツを取捨選択していきたいですね。会社としても最適な学習環境を整備することが大事—— ありがとうございました。最後に「SIGNATE Cloud」を検討している企業へのメッセージをお願いします。eラーニングを含め、AI人材育成を進める上で一番の課題となるのが、学習時間の確保だと思います。今回、当社の反省点としては線引きをグレーにしてしまったこと。自己学習として業務外の時間で行ってもらうのか、それとも仕事として扱うことで業務時間も学習してよしとするのか。その線引きをしっかりとするのが大事だと思います。その上で、業務扱いとして時間を確保してあげられるのが理想。当社も、そうした環境を実現できるように整備を進めていきたいと思っています。※掲載内容は取材当時のものです。