創業以来、「合理的な生命保険と質の高いサービス」をお客さまに提供するため、社員一丸となって探求し続け、ソニーグループの金融事業の中核を担うソニー生命。2024年度から始まった中期経営計画を機に、「お客さまの『生きがい』ある人生をお守りする」という新たなビジョンが掲げられ、人生100年時代の到来や価値観の多様化が進む中でも、お客さまが自分らしく生きることを支えたいという想いが込められています。中期経営計画では、「AIやテクノロジーを活⽤した新たなビジネスモデル・サービスの創出によるシェア拡⼤」や「デジタルを活⽤した⽣産性向上」というテーマが掲げられ、その実現に向けた基盤として、「人的価値の向上」が重要課題に位置付けられています。こうした背景の中、DX人材の育成や全社的なデジタルスキルの底上げに最前線で取り組む人材開発部の梅村さん、安田さん、足立さんの3名にお話をお伺いしました。(写真左から、梅村さん、足立さん、安田さん)中期経営計画を受けて、全社的なデジタルスキルの底上げに着手—— はじめに、今回SIGNATE Cloudを活用した大規模な研修実施に至った背景について教えてください。梅村:新たな中期経営計画が今年度からスタートし、その中で「人的資本の価値向上」が方針として掲げられました。そこで、全社的なデジタルスキルを底上げするという明確な目標を定め、本格的に取り組むことにしました。安田:全社的な人材育成に取り組むにあたって、まず「ソニー生命の社員としてどこまでできれば良いのか」という標準的なスキルレベルを定める必要があると考えました。以前、部長クラスと新入社員を対象に人数を絞ってDXに関する研修を実施した際には、内容が難しすぎた印象があり、もう少し基礎的で万人に共通するものが必要だと感じていました。そんな折に、経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」という基準があることを知り、それをベースにするのが適切だと判断しました。この標準を起点として、ソニー生命にとって必要なスキルを加えたり削ったりすることで、「ソニー生命のオリジナルのスキル標準」を構築していけると考えています。スキルの可視化と、導入後の伴走支援が決め手に—— SIGNATE Cloudを教育ツールとして選んでいただいた決め手は何でしたか?安田:SIGNATE Cloudは、デジタルスキル標準に準拠しており、多くの社員に対して同時に研修が可能であるということが我々のニーズに合っていました。また、導入にあたっては複数のサービスを検討しましたが、その中でもSIGNATE Cloudはインプットだけの学びではなく、手を動かして実践的な形で学びながら、かつ、結果が点数として可視化される点がポイントでしたね。例えば、データ処理・読解の実務スキルを学べるデータリテラシーはアセスメントが全部で3種類ありますが、どれも良く作り込まれていますね。実際にトライアルでアセスメントを受けて、学習を推奨された講座を受講すると、本当にその単元ができるようになった実感がありました。加えて、このようなツールは、単に導入されるだけで効果が出るわけではありません。最終的にSIGNATE Cloudの導入を決めた理由は、ツールとして魅力的だっただけでなく、研修を円滑に進めるための運用支援や具体的な提案をしていただいたことが、ツール選定の大きな決め手でした。初回アセスメントは98%が受検。そして半年で70%が合格点をクリア—— 実施された研修の流れについて教えていただけますか?安田:内勤社員の約2,000名を対象に、半年間でSIGNATE Cloudが提供するDXリテラシー、データ読解、データ処理の3つのアセスメントテストにおいて合格点を取ることを研修の目標に掲げました。業務の状況を考慮し、実施期間を前期と後期に分けて、まずは前期の対象者約1,300名を対象に研修をスタートしました。研修の構成としては、最初の1か月間でアセスメントを受検して現在のスキルレベルを把握し、残りの5か月間でスコアを伸ばすための学習を進めるという形です。受検の案内をした当初は戸惑う社員も多くいたと思います。しかし、研修の意図や目的を共有する情報発信を繰り返し行い、未受検者へのフォローや社員の受検状況、満点取得者の情報発信などを通じて、次第に多くの社員が前向きに取り組んでくれるようになりました。結果として、98%の社員にアセスメントを受検してもらうことができたことは一つの成果になったと思います。受検結果では、DXリテラシーはほぼ全員が初回で高得点を獲得し、データ読解も半数以上の社員が初回で合格点に到達していました。しかしながら、データ処理スキルについては合格ラインに達した社員が3分の1程度だったので、ここが弱点であることが明確になりました。そうした可視化された結果を踏まえて、残りの期間で合格点を目指して学習を進めてもらうため、さまざまな施策を考えて実行に移しました。その結果、半年間の研修を経て、約70%にあたる901名が3つのテストで合格点を獲得することができ、SIGNATE Certificationsでは約80%がGrade1以上を取得しました。合格率40%の難関を、1300名で突破するために—— 学習促進のために、どのような施策を行いましたか?安田:みなさんの学習状況を見ていくと、できる社員は自分でどんどん進める一方で、行き詰った社員はそのまま学習から離れてしまう傾向が見られました。日々業務で忙しい中、いかにして取り組んでもらうかは課題でしたね。そこで、スコアの低い社員や、高いスコアをさらに伸ばしていきたい社員など、それぞれに適した施策を打つことにしました。特に合格点を取れていない社員については、インサイトを分析して、「頑張っているがスコアが伸びない社員」「学習時間を確保できていない社員」「モチベーションが低く着手していない社員」という3つのグループに分けて対策を検討しました。こうした施策はあらかじめ計画していたわけではなく、SIGNATEさんからもさまざまな提案をいただきながら、進行中に企画し実行していきました。モチベーションが低くなかなか着手できない社員には、研修の意義を改めて発信し、上長から受講を促してもらったり成績を開示したりすることで、取り組みへのきっかけ作りやモチベーションの向上を図りました。一方で、頑張っているもののスコアが伸び悩んでいる社員には、基礎的なことがなかなか理解できず苦戦している社員が多かったので、基礎をしっかり身につけてもらうために『基本の「キ」セミナー』を開催することに。このセミナーは151名が参加し、アーカイブ視聴者も132名に上るなど、大変好評でした。さらに時間が確保できていない社員に対しては、決まった時間に集まって一緒に勉強する『もくもく会』を企画しました。【『データ活用の基本の「キ」セミナー』の様子】足立:そのほかに、すでに合格点をクリアしている社員が実際にアセスメントを解いている画面を共有しながら実況解説を行う『実況中継イベント』も実施しました。この企画には117名が参加して、アーカイブ視聴者は89名に上りました。イベントにはすでに高得点を取っている社員や、次期研修の対象者も参加しており、今後も継続してほしいという声が寄せられるなど、盛り上がっていましたね。社員の自己学習に任せるだけでなく各施策を行うことで、学習促進に効果があったと手応えを感じています。安田:学習促進において特に効果的だったのは、成績が可視化される仕組みです。弊社では、スキルアセスメント結果をタレントマネジメントシステムに登録し、社員の個人ページに四象限マップを再現する仕組みを整備しました。これにより、全社的なスキル傾向や、個人ごとのスコア・データが視覚的に確認でき、上司は部署全体や部下のスキル状況を把握しやすくなりました。目標や自身の学習成果が見えることは社員のモチベーションにもつながり、さらに部署別で成績を可視化することで部署間の競争意識も生まれ、切磋琢磨する環境を作り出せたのではないかと思います。これらの施策によって、社員が自発的に学ぶ風土が醸成されつつあると実感しています。本研修を通して、自発的に学び合う文化が醸成された—— 半年間の研修を終えての振り返りと、今後の取り組みについて教えてください。安田:今回の研修期間を通じて、スコア獲得においては一定の成果が得られたと感じています。ただし、スコアを取ること自体が研修の最終目的ではないので、今後は学んだ知識やスキルを実務に活かし、業務の改善や生産性向上を目指して取り組んでいきたいと考えています。足立:研修を受けた社員からは、「Excel関数を使えるようになり、処理時間の短縮やオペレーションミスの削減ができた」「データの見せ方にバリエーションが増え、よりわかりやすい資料が作成できるようになった」「ChatGPTを活用して報告書や文書作成の効率を上げられた」といったポジティブな声が寄せられています。また、「同一のアセスメントを一斉に社員が受講していることで共通の基礎知識ができ、業務におけるコミュニケーションがスムーズになった」という意見もあり、研修の効果が徐々に実感され始めています。安田:ただ、そうした声もまだ一部であり、全体的には学んだスキルをどのように活用すればよいかわからないという社員も多いのが現状です。今後は、スキル分野ごとに同じ目標を持つ社員を集め、成功事例や経験を共有する勉強会や情報交換の場を設け、各所で培ったノウハウを集約して発信する取り組みを強化していきたいと考えています。梅村:すでに一部の部門では、スキルの高い社員が社内講師となって勉強会を開催するなど、自主的な学びの推進が始まっています。【社内講師による勉強会の様子】今後は部門を超えた情報共有の場を増やし、学びの機運をさらに盛り上げるとともに、実務でスキルを活かせる社員の裾野を広げていきたいですね。デジタルスキル向上の施策を通して、個人のスキルを可視化する梅村:本研修を通して、「全社員のデジタルスキルを底上げして、人的資本の価値を高めていく」という中期経営計画のビジョンを共有することが、会社全体としての人材育成への積極的な姿勢を示すきっかけとなりました。さらに、本研修では「人材育成のほか、今後の異動等にも活用する」といった一文を発信文書に記載したことで、社員がキャリア形成を考える良い刺激となり、研修への積極的な取り組みを促しました。業務においてデジタルスキルが求められる場面が今後さらに増えていくことが予想される中、今回の施策を通して社員のスキルを可視化することができました。これらの情報を基に、組織全体としての最適な人材配置も含めて、デジタルスキルや知識を実務に活かしていく取り組みを一層推進していきたいです。※掲載内容は取材当時のものです。