1970年にマンション管理業からスタートし、安心安全で快適な “あたりまえの毎日” を支えながら、時代とともに事業を広げ続けている東急コミュニティー。現在は、マンション・ビルにとどまらず、スタジアムなどの大規模施設や公共施設に至るまで、さまざまな建物の総合管理やリフォーム、運営サポートを幅広く手掛けています。そして今、お客様へのさらなるサービス向上や収益性の改善を図るうえで、デジタル活用の必要性が一層高まっています。2030年までの中期経営計画でも、デジタル投資やDX推進の施策が掲げられ、各種取り組みが本格的に始まっています。こうした背景を受け、2024年度には社員約4,200名を対象にデジタルリテラシー研修を実施しました。今回は、その企画段階から実施、運営を担当された落合さん、吉井さん、吉田さんの3名にお話をお伺いしました。(左から吉田さん、吉井さん、落合さん)社員約4,200名を対象としたDXリテラシー研修を企画―― 全社員対象の研修実施に至った経緯を教えてください。当社では以前から、IT部門や一部の専門人材向けには研修を行っていました。しかし、導入したデジタルツールやDX施策を浸透させるには、利用する側のマインドセットとリテラシーが不可欠です。実際、新しいツールに抵抗を示す社員や、「専門人材だけが取り組めばよい」と考える社員も少なくありませんでした。全社員がリテラシーを持つことで、一人ひとりが「自分ごと」としてDXを捉えられるようになる。それによって推進者がより活動しやすい環境ができ、DX推進の企画や施策の実行性が向上すると考えていました。そのためには、まず、DXを推進しやすい企業風土や環境を整えることが重要だと感じました。DXを推進しやすい企業風土をつくるため、リテラシーは一部の選抜者ではなく全社員が習得すべき知識であることを社内に理解してもらえるよう働きかけ、2024年度に全社員向けeラーニングの実施を承認してもらいました。あわせて、eラーニングの内容をもとにしたワークショップも開催する計画も立てました。――実施が決まって、具体的な研修の計画はどのように立てられたのでしょうか。まず、研修効果を測定する指標が必要だと考えました。自前で作ることも検討しましたが時間がかかるため、他社でも活用されている「デジタルスキル標準」を採用することにしました。私自身、この基準に違和感がなく、汎用性も高いと判断したからです。講座選定で重視したのは、1. 成果が可視化しやすいこと2. 全社員が対象でも短時間で完結できること3. 進捗を簡単に把握できること4. eラーニングを基盤にワークショップへ展開できることこの4点です。さらに、研修を提供する企業自身がDXを自社ビジネスで実践し、成果を上げているかどうかも確認しました。過去の経験から、実務で使われていない内容の研修は現場で活かしにくいと感じていたためです。こうした観点で複数社を比較検討し、最終的にSIGNATEさんの講座を採用しました。 「98%が目標スコアをクリア」という想定以上の成果を実現―― 研修を実施するにあたって、どのような計画・準備をされたのでしょうか。当社はeラーニングをはじめとした研修制度が充実しているため、準備自体は問題なく進められました。ただ今回は、全社レベルでの実施です。また、講座を受講するだけでなく、テストも受験して一定のスコアを取得するところまでがセットの研修でしたので、一人でも多くの人にクリアしていただけるように準備することは大きなチャレンジでした。そこで、まずはSIGNATEさんにご協力頂いてガイダンスの動画を作成し、受講前に視聴してもらえるよう受講対象者へ動画を事前に展開しました。動画では、講座の受講とテストの受験の両方が必要なことを伝えるために、色分けしたり実際の画面や図を用いたりしながら研修のステップをわかりやすく説明しました。また、今回の研修実施の背景や目的、必要性なども動画の中でしっかりとアピールするように努めました。――実際に研修が始まってからは、どのような対応をされたのでしょうか。始まってからは特別なことはしていないのですが、4,000人規模の研修ですので、進捗状況もばらつきがありました。そこで、進捗状況を定期的に確認して、まだ受講していない人やテストを受験していない人、スコアがクリアできていない人などに対してリマインドを行いました。受講期間終了約1ヵ月前からは、かなり頻繁にリマインドを送信しましたね。eラーニングだと、なかなか着手してくれない人が一定数は出てきてしまいます。4,000人規模となると業務の状況にもモチベーションにも幅がありますから、かなり泥臭く地道にフォローしていくべきだと考えていました。―― 研修を終えて、結果はどうでしたか最終的に98%の社員が目標スコアをクリアし、想定以上の結果を得ることができました。最後まで粘ってリマインドを継続した甲斐があったなと思っています。先ほどもお話ししましたが、当社はいろいろなeラーニングが定期的に実施されているので、社員がeラーニング型の研修に慣れているというのもあったかもしれませんね。約4,200名が対象ですし、DXのようなものに苦手意識がある社員も一定数いるので、当初は達成率8割程度を想定しておりました。98%という結果には私たちも少し驚きました。ガイダンス動画で、「研修の目的」と「やるべきこと」を事前に受講者に周知できていた点が大きかったと感じています。我々としては初めてのシステムを導入するという中で、SIGNATEさんにずっと伴走していただいて、なんとかゴールまで持って行けたという印象です。途中わからないことや対応が必要なことも多くありましたが、都度アドバイスを頂けたのはありがたかったですね。リテラシーの次を見据え、さらなる企業風土改革に取り組む―― 研修後の社員の反応や変化について教えてください。リテラシー研修は基礎知識の習得が目的なので、効果が目に見えて現れるのはこれからだと考えています。ただ、社員のほぼ全員がDXリテラシーの知識やマインドセットを持つことができたので、今後、新たなデジタルツールを導入する際の抵抗感はなくなっていくだろうと考えています。研修をきっかけに社員の姿勢も前向きに変わってきている実感がありますね。社内アンケートでも多くの方から「学んで良かった」というフィードバックをいただきました。「この内容をもっと深掘りして学びたい」、「次は業務に直結する知識を学びたい」という声も多数挙がってきています。デジタルを活用することについてポジティブに捉えていただく方が増えたという手応えを感じています。そうした変化の一例として、当社では希望者向けにITパスポートの資格取得支援講座を開講しておりますが、今年度は希望者が大幅に増加しました。今回の研修を通じて、DXへの関心が少しでも広がったのであれば嬉しいですね。―― 全社員へのeラーニングを終えて、この次はどのような取り組みをお考えですか。今後入社する社員にも継続的にこのリテラシー研修は実施していきたいと考えています。また希望者向けに、今回学んだ内容にプラスして業務改善に直結する、ワークショップ形式の実践的な研修を用意したいと考えています。初の試みなのでまずは30人程度のスモールスタートで実施し、今後軌道に乗ってきたら、別の研修を企画して、人数やテーマなどを広げて実施していきたいと考えています。―― 今後の展望についてお聞かせください。我々は、全体の教育を担当していますので、まずは全社員のDXリテラシーを一定水準まで引き上げることを目標に、共通で身につけるべき知識やスキルの研修を今後も継続します。一方で、社員が興味に合わせて自由に学べる学習環境や学習機会の整備・提供等を通じて、自律的な学習文化を醸成し、身につけた知識を業務改善に活かす社員が増えることを期待しています。さらに、その中から専門人材へとステップアップする人材が育ってくれれば理想的です。