生成AIの代表格であるChatGPTは、業務の効率化や生産性向上に大きく貢献するツールとして多くの企業で注目を集めています。しかし、ChatGPTの便利さの裏には、セキュリティに関するリスクが存在することも理解しておく必要があります。特に、機密情報の取り扱いやデータ漏洩、不正利用などのリスクに対する懸念は、企業にとって見過ごせない課題です。安全かつ効果的に活用するためには、ChatGPTの利用に伴う潜在的なリスクを把握し、適切な対策を講じることが求められます。本記事では、ChatGPTのセキュリティリスクと具体的な対策を解説します。ChatGPTのセキュリティとは?ChatGPTは、会話タイプの生成AIサービスで、テキストで入力された指示や質問に対応した情報を出力してくれる便利なツールです。しかし、ChatGPTの利用には、セキュリティ面で注意が必要です。特に、個人情報や機密情報を誤って入力しないように注意し、安全なネットワーク環境で利用することが重要です。特に企業で利用する場合、情報の取り扱いに関するリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが求められます。以下の記事では、ChatGPTの仕組みについて詳しく解説しています。ChatGPTの仕組みとは?基本からわかりやすく解説以降では、ChatGPTとセキュリティに関する基礎知識をお伝えします。ChatGPTの仕組みとデータの扱い方ChatGPTは大量のデータをもとに学習した生成AIモデルで、ユーザーの入力に応じて自然な対話を行えるよう設計されています。OpenAIのプライバシーポリシーにもとづいて、ChatGPTで入力されたデータは一時的に保存され、学習目的には使用されない設定となっています。ただし、ユーザーが学習目的のデータ共有を許可した場合や、API利用時には例外があるため、利用目的に応じたプライバシーポリシーの確認が必要です。ChatGPTの主な仕組みは以下のとおりです。特徴補足入力データの非保存OpenAIでは、デフォルト設定でユーザーの入力データを学習目的で保存しないポリシーを採用しています。ただし、APIを利用する際など、一部の利用方法ではデータが保存されるケースがあります。たとえば、企業が自社のサービスにChatGPTを組み込む際には、データ保存を有効化してエラー検証やデータ解析に利用する場合があります。企業で利用する場合は、契約内容や設定を事前に確認し、保存の有無を明確に把握することが重要です。セキュリティ対策AIモデルの不正利用を防ぐため、定期的にシステムのアップデートが実施されており、安全性が維持されています。こうした仕組みによって、基本的には安心して利用できる環境が整っています。しかし、入力内容や使い方によってはセキュリティ面でリスクが生じる可能性もあるため、個人情報や機密情報の取り扱いには注意が必要です。セキュリティに関する基本的な保証と制限ChatGPTは非常に便利なツールですが、安全に利用するためには、以下のようなセキュリティ面の注意点を押さえておく必要があります。注意点補足情報提供時の配慮ユーザーが提供した情報が保存される可能性がある場合は、その旨を明確に伝え、事前に同意を得ることが重要です。誤用のリスクChatGPT提供元のOpenAI自身も、AIモデルの誤用を完全に防ぐことは難しいと認めています。たとえば、悪意あるユーザーがChatGPTを用いてフィッシングメールや偽情報を生成する可能性があるため、利用者が入力内容を慎重に管理し、不適切な利用を防ぐ努力が求められます。適切な使い方と注意を守れば、ChatGPTを大きなセキュリティリスクなく利用することが可能です。ただし、リスクを最小限に抑えるためには、ユーザー自らが情報管理を徹底し、安全な環境で使用することが不可欠です。ChatGPTのセキュリティリスク本章では、ChatGPTの利用に伴う代表的なセキュリティリスクを4つピックアップして解説します。①データ漏洩リスクChatGPTを使用する際、個人情報や機密情報を誤って入力してしまうリスクがあります。たとえば、社内資料を引用した回答を求めたり、具体的な顧客情報を入力した場合などにデータが外部に漏洩する可能性があります。以下の点に注意しながら利用することが大切です。リスクの発生原因補足ユーザーの誤操作氏名、住所、電話番号などの個人情報や重要な機密情報(例:企業の営業機密や未公開情報)を誤って入力するリスクがあります。データ保存の不備サービス提供者が一時的にデータを保存する場合、そのデータが不正アクセスの対象になる可能性があります。通信の傍受セキュリティが十分でないネットワーク環境でChatGPTを使用すると、やり取りが第三者に傍受されるリスクがあります。ChatGPTを利用する際は、個人情報や機密情報を入力しないよう注意し、安全なネットワーク環境で利用することが重要です。②フィッシングや不正利用ChatGPTの高度な文章生成能力を悪用して、フィッシング詐欺や偽情報の作成に使われるリスクがあります。たとえば、ChatGPTを利用して作成された巧妙なフィッシングメールにより、受信者が正規の企業からのメールだと誤認し、偽サイトに誘導されるケースが報告されています。こうしたリスクが生じる理由を以下にまとめました。リスクの発生原因補足悪意あるユーザーの利用ChatGPTは信憑性の高い文章を作成できるため、非常に巧妙なフィッシングメールを作ることが可能です。悪意あるユーザーがChatGPTを使い、大量の詐欺コンテンツや偽情報を作成する危険性があります。被害者による誤認識ChatGPTが生成したコンテンツが人間によるものだと勘違いされやすく、被害者が騙されるケースが多くあります。例えば、ChatGPTを使用して作成されたフィッシングメールを正規の企業が送信したと誤認識し、受け取った人が偽サイトに誘導されるといったケースが報告されています。③ビジネス利用におけるリスク企業がChatGPTをビジネスで活用する際、社内データの管理が不十分だと情報漏洩のリスクが高まります。以下の点に注意しながら、ビジネス利用におけるリスクを回避しましょう。リスクの発生原因補足ガイドラインの整備不足ChatGPTの利用方法に関する明確な社内ルールがないと、誤った使い方が発生しやすくなります。チャットログの管理不備AIが生成した会話内容が適切に管理されず、外部に漏れる可能性があります。リスク意識の欠如従業員がリスクを十分に理解していない場合、機密情報を無意識にAIに入力してしまうことがあります。ChatGPTのビジネス利用におけるリスクの例としては、顧客データやプロジェクトの詳細情報をチャットで共有し、ログが不正にアクセスされるといったケースが挙げられます。④セキュリティ脆弱性の悪用ChatGPTが悪意のある目的で利用されると、マルウェアの作成をはじめ不正行為に使われるリスクがあります。たとえば、プログラムコードの生成機能を悪用して、ネットワーク侵害やデータ窃取を目的としたコードが作成される可能性があります。このようなリスクが生じる理由を以下にまとめました。リスクの発生原因補足不正利用の容易さChatGPTの柔軟で汎用的な機能は便利ですが、それが悪意あるユーザーにも利用しやすい環境を提供してしまう可能性があります。ChatGPTのようなプラットフォームは多くのユーザーに公開されており、悪意あるユーザーが簡単にアクセスして悪用する危険性があります。監視の難しさモデルの利用状況をすべて把握するのは難しく、不正行為が見逃される可能性があります。ChatGPTにおけるセキュリティ脆弱性の悪用リスクの例は以下のとおりです。サイバー攻撃に使われるプログラムコードを生成されてしまうフィッシング詐欺用の文章やスクリプトを作成されてしまう以下の記事では、ChatGPTを含む生成AIの活用に伴い生じるセキュリティ面のリスクを幅広く紹介しています。ChatGPTを安全に活用するうえで、ぜひご覧ください。生成AIのセキュリティリスクとは?具体例と対策利用者が取るべきChatGPTのセキュリティ対策ChatGPTは便利なツールですが、正しく使わないとセキュリティ上のリスクが発生する可能性があります。本章では、個人ユーザーとビジネスユーザーそれぞれが取るべき具体的な対策について、順番にわかりやすく説明していきます。個人ユーザーの対策はじめに、個人ユーザーが取り組むべきChatGPTのセキュリティ対策を4つ紹介します。①個人情報を入力しないChatGPTに入力した情報が完全に外部漏洩のリスクから守られているとは限りません。そのため、以下のような情報は入力しないように徹底しましょう。個人情報:氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど個人を特定できる情報金融情報:クレジットカード番号や銀行口座情報などアカウント情報:パスワードやログインIDなどの認証情報機密性の高い内容:契約書や法律に関する機密情報など常に「この情報が他人に知られた場合、問題が起きる可能性はないか?」と自問する習慣を持ちましょう。これにより、入力内容を慎重に管理し、セキュリティリスクを最小限に抑えることが可能です。②端末のセキュリティ設定を確認するChatGPTを利用する端末が他人に操作されないように、以下のようなセキュリティ対策を実施しましょう。セキュリティ対策補足ロック機能の活用・強力なパスワードやPINコードを設定する。・指紋認証や顔認証など、生体認証機能を活用する。アプリ、機能の整理使用していないアプリやブラウザ拡張機能を削除して、セキュリティリスクを減らす。定期的なアップデート・OSやアプリを最新のバージョンに保つ。・セキュリティパッチが配布されたら速やかに適用する。これらの対策を習慣化することで、端末の安全性を高め、不正利用や情報漏洩のリスクを大幅に減らせます。③信頼できるネットワークを利用するChatGPTを利用する際は、公共のWi-Fiではなく、自宅や職場などの安全性が確保されたネットワークを使いましょう。公共のWi-Fiは多くの人が自由に接続できるため、通信内容が盗み見されるリスクがあります。信頼できるネットワーク環境を選ぶことで、情報漏洩の危険を減らすことが可能です。④利用履歴を定期的に確認するChatGPTの利用履歴を定期的に確認し、不要な履歴は削除しましょう。利用履歴が残ったままだと、他人に閲覧されるリスクや、不正アクセスによって情報が漏洩する可能性があります。そのため、定期的に利用履歴を確認し、不要な履歴は削除することをお勧めします。定期的な管理を心がけることで、安全な利用環境を維持できます。ビジネスユーザーの対策続いて、ビジネスユーザーが取り組むべきChatGPTのセキュリティ対策を4つ紹介します。①利用ポリシーの策定と周知ChatGPTを業務で活用する際は、利用目的や禁止事項を明確にしたガイドラインを作成し、従業員全員に徹底しましょう。以下のポイントを盛り込んだ利用ポリシーの策定が望ましいです。ポイント補足機密情報の取り扱いを制限顧客情報や機密性の高いデータを入力しないように規定する。生成データの管理方法を明確化ChatGPTを使って生成されたデータの保存期間やアクセス制限など、適切な管理手順を定める。不適切な用途を禁止自動生成された情報を無断で公開するなど、意図しない使用を防ぐためのルールを設定する。利用ポリシーはただ作成するだけでなく、全従業員が内容を理解し、遵守できるように教育や周知を徹底してください。②情報の入力制限ChatGPTを業務で利用する際には、入力する情報を明確に制限し、不適切なデータが含まれないようルールを設定しましょう。以下のような情報は入力しないことを厳守させることが望ましいです。顧客の個人情報:名前、連絡先、住所などのデータ自社の知的財産や戦略情報:(例)商品開発の詳細や営業戦略に関する内容プロジェクトの進捗や成果物の詳細、そのほか社内でしか共有すべきでない情報チームでChatGPTを利用する場合は、「入力してよい情報」と「入力してはいけない情報」を具体的に分けたチェックリストを作成し、全員に共有しましょう。③従業員向けのトレーニングChatGPTを安全に利用するためには、従業員へのトレーニングが欠かせません。以下のような内容を含めた教育を行い、安全な利用を徹底しましょう。教育内容補足事例の共有と対応策実際に起こりうるリスクの具体例を共有し、それに対する適切な対応方法を学びます。利用履歴や生成データの管理生成された内容を適切に管理し、不要なデータは削除するなど、情報管理の手順を指導します。従業員全員がこれらの知識を理解し実践できるよう、研修を定期的に実施することが望ましいです。④チャットログの管理と削除業務で生成したチャットログは、情報漏洩を防ぐために適切に管理する必要があります。以下のようなルールを設定し、安全に管理しましょう。管理ルール補足不要なログは定期的に削除チャットログは一定期間が経過したら削除し、不要なデータを残さないようにします。アクセス権限の制限チャットログへのアクセスは管理者のみに限定し、関係者以外が閲覧できないようにします。これらのルールを社内で共有し、定期的に見直すことで、チャットログの安全な管理と情報漏洩のリスク低減が期待できます。OpenAI側の対策ChatGPTを運営するOpenAIでは、セキュリティリスク抑制のために、以下のような対策を講じています。対策補足GPT-4 System Cardの公開OpenAIは、セキュリティリスクの管理に関する取り組みを「GPT-4 System Card」として公開しています。この資料では、リスクを最小限に抑えるための具体的な対策や方針が紹介されています。透明性を重視したポリシー運用ユーザーに安全性を提供するため、OpenAIはポリシーを定期的に見直し、最新の内容に更新しています。以下の記事では、生成AIの使い方について詳しく解説しています。ChatGPTを安全かつ効果的に活用するうえで役立つ情報をまとめていますので、併せてご覧ください。生成AIの使い方とは?知っておきたいコツと注意点を解説 実際のChatGPTのセキュリティリスク事例過去に実際に問題となったChatGPTのセキュリティリスクに関する事例を以下にまとめました。それぞれの事例を把握しておき、ChatGPTの安全な利用にお役立てください。セキュリティリスク事例機密情報の漏洩韓国のサムスン電子で、エンジニアが社内の機密ソースコードをChatGPTに誤ってアップロードし、情報が流出する重大な問題が発生しました。この出来事を受け、サムスン電子は社内での「生成AI」ツールの使用を全面的に禁止する措置を講じています。偽情報の拡散中国では、「杭州市が自動車の通行制限を3月1日に撤廃する」という情報が浙江省の政府系放送局のSNSアカウントから発信され、大きな注目を集めました。浙江省当局がこれを否定し、調査の結果、ChatGPTを使って作られたフェイクニュースであることが判明しました。参考:Forbes JAPAN「サムスン、ChatGPTの社内使用禁止 機密コードの流出受け」 東洋経済ONLINE「中国「ChatGPT」偽ニュース拡散で揺れる政権対応」ChatGPTのセキュリティを強化するためのポイントここまでの説明を踏まえて、ChatGPTのセキュリティを強化するために意識すべきポイントをまとめました。ポイント補足入力内容を慎重に確認するChatGPTに入力するデータは、内容をよく吟味してから提供しましょう。特に不必要な情報の共有は避けるべきです。機密情報を共有しない個人情報や社外秘のデータなど、重要な情報は絶対に入力しないよう徹底してください。セキュリティツールの活用VPNやファイアウォールなどのツールを併用することで、ネットワーク通信の安全性を確保できます。特に公共のWi-Fiを利用する場合、VPNを活用することで通信が第三者に傍受されるリスクを軽減できます。ただし、自宅やオフィスなど、既に安全なネットワーク環境下では必須ではありません。利用履歴の管理と削除利用履歴を定期的に見直し、不要なデータが残っていないか確認したうえで、必要に応じて削除を行います。定期的な社内教育チームでChatGPTを利用する場合は、定期的にセキュリティ教育を実施して、全員の意識を高めることが重要です。ChatGPTのセキュリティリスクがもたらす企業への悪影響や対策について不安があれば、ChatGPT活用に関する専門知識を備えた外部の研修・教育機関から支援を受けるのも一つの方法です。弊社では、想定されるセキュリティリスクの内容や対策を含め、生成AIに関するリテラシーと実践的なスキルを学べる『生成AI活用スキル習得ワークショップ』を提供しています。本プログラムは座学とワークショップを組み合わせたハイブリッド形式で、参加者が効率的に学べる構成となっています。特に、生成AIの導入で課題となりやすい「どの業務で生成AIを活用すべきかの特定」や、実務にもとづく「ChatGPTカスタムプロンプトの開発」に重点を置いており、社内で生成AIの活用を推進できる人材の発掘・育成をサポートしています。ChatGPTのセキュリティリスクを抑えつつ効果的な活用を目指せますので、ご興味のある企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちら法的・倫理的リスクなど、セキュリティ面以外の生成AIのリスクについて理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。生成AIのリスクとは?法的・倫理的・技術的リスクと対策まとめChatGPTは、OpenAIによるセキュリティ対策が整備された生成AIサービスですが、リスクがまったくないわけではありません。データ漏洩や不正利用の可能性など、利用者自身がセキュリティリスクを理解し適切な対策を取ることが重要です。基本的な対策としては、個人情報の入力を避ける、セキュリティツールを活用する、利用履歴を定期的に確認・削除するといった取り組みが挙げられます。また、企業で利用する際は、社内ポリシーを明確化し、従業員教育を徹底することでリスクを軽減できます。入念な対策を講じ、ChatGPTを安全に利用できる環境を整えましょう。