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DX推進スキル標準のソフトウェアエンジニア|役割、業務、必要なスキル

DX推進スキル標準のソフトウェアエンジニア|役割、業務、必要なスキル

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2024/2/5

近年、デジタル技術の急速な発展により、多くの企業や組織はこれらを利用して、ビジネスモデル、経営戦略、業務プロセス、顧客体験を一新し、新たな価値を生み出すDXの取り組みに注力しています。しかし、DXを成功させるためには、システムやソフトウェアの設計、開発、実装、運用が不可欠です。

経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が公開している「DX推進スキル標準」によると、DXに必要な5つのスキル人材の一つとして、ソフトウェアエンジニアが挙げられています。

この記事では、DX推進スキル標準をもとに、ソフトウェアエンジニアの役割や業務内容、必要なスキルについて解説します。

参考:独立行政法人 情報処理推進機構 経済産業省「デジタルスキル標準ver.1.2」2024年7月

DX推進スキル標準におけるソフトウェアエンジニアとは?

一般的に、ソフトウェアエンジニアとは、コンピューターソフトウェアを設計・開発・保守する専門家のことですが、DX推進スキル標準によると以下のような人材であると定義されています。

  • DX推進にあたって、デジタル技術を用いたプロダクトを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担当する人材

デジタル技術を活用した製品・サービスを企画・構想段階から形のあるものへと具現化していき、具体的なDXの成果・価値を生み出していく人材であると考えられています。

ちなみに、DX推進スキル標準とは、DX推進を担う人材の役割および習得すべきスキルに関する指標のことです。DX推進スキル標準について詳しく知りたい場合は、以下の記事にまとめていますので、併せてご覧ください。

DX推進スキル標準とは?必要性、5つの人材類型、活用イメージ

「ソフトウェアエンジニア」という名称について

DX推進スキル標準では、「エンジニア」や「ITエンジニア」などではなく「ソフトウェアエンジニア」という名称を採用した理由として、ソフトウェアの役割・重要性の高さを挙げています。

IT分野のエンジニアにとって、多様なハードウェアやデバイスを扱う能力は確かに重要です。しかし、物理世界がデジタル化する現代の流れの中で、競争力を持ち差別化された成果を出すためには、ソフトウェアの役割がより一層重要になっていると言えます。

「ソフトウェアエンジニア」という言葉は、IT分野におけるエンジニアの呼称の中でも、特に長い歴史を持つものであり、ITが社会に大きな変化をもたらしてきた現代の歴史を通じて長く使用されています。そして「ソフトウェアの要件定義から設計、実装、保守・運用に至るまで、幅広い分野や工程に対応するエンジニア」というニュアンスも含まれています。

以上を踏まえて、幅広く対応できる高い技術力によって「従来と同様に今後も時代の先端を創り出していく人材」という意味を込めて、ソフトウェアエンジニアの名称が採用されています。

ソフトウェアエンジニアに期待される役割

期待されている具体的な役割としては、主に3つあります。

1つ目は、自身の高い技術力を活用して、会社の競争力を高めることです。

IT・デジタル関連の高い技術力を駆使し、DXの取組みの推進やDXの目的である自社の競争力の向上に貢献することが重要です。その際には、顧客やユーザーに価値を提供しているか、そして会社の顧客価値を拡大しているかを常に意識することが求められます。

2つ目は、絶えず変化する環境の中で、他のステークホルダーと柔軟に協力しながら価値ある成果を生み出すことです。

ステークホルダーの要望やニーズを深く理解し、期待される水準、あるいはそれ以上のシステムやソフトウェアを提供することが求められます。特にDXの取り組みにおいては、新しい価値を見つけ出し創造することが特に重要です。これを達成するためには、顧客やユーザーのニーズを自分から積極的に探求し、理解する姿勢も不可欠です。

3つ目は、自身で競争力のあるソフトウェアを開発できるほどの高い技術力を持ち続け、向上させることです。

他の人材や企業の助けを借りずに、迅速に競争力のあるソフトウェアを自分の手で作り上げる能力が、ソフトウェアエンジニアにおける最大の強みです。この強みを維持し、発展させていくためには、継続的なスキルアップが求められます。

別の人材類型との連携例

一例として、ソフトウェアエンジニアが別の人材類型である「ビジネスアーキテクト」と連携するケースを挙げると、ユーザーの要望にもとづいた開発要件の定義やソフトウェアアーキテクチャの設計といった業務を進めていくことが想定されています。

これにより、ユーザーにとって大きな価値を提供できるソフトウェアの開発につながります。

ビジネスアーキテクトとは、DXの取り組みにおいてビジネス・業務の変革を通じて実現したいことを設定したうえで関係者をコーディネートし、関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けて一貫したプロセスの推進を通じて目的を実現する人材であると「DX推進スキル標準」において定義されています。

DXの人材類型の一つであるビジネスアーキテクトの詳細は、以下の記事で解説しています。理解を深めたい場合は、併せてご覧ください。

ビジネスアーキテクトとは?役割、業務、必要なスキル|DX推進スキル標準

ソフトウェアエンジニアのロールごとの責任・業務・スキル

ソフトウェアエンジニアのロールとして設定されているのは以下の4つです。

  • フロントエンドエンジニア

  • バックエンドエンジニア

  • クラウドエンジニア/SRE(Service Reliability Engineering)

  • フィジカルコンピューティングエンジニア

ここでいうロールとは、DXの推進にあたって担当する責任や主要な業務内容、それらを実現するために求められるスキルセットなどをベースに定められた役割のことです。

ここからは上記4つのロールについて、責任・業務・求められるスキルをそれぞれ順番に解説します。

フロントエンドエンジニア

まずは、フロントエンドエンジニアとしてのロールを担うために不可欠とされる責任・業務・スキルを順番に紹介します。

責任

このロールが担う責任は、デジタル技術を駆使したサービスにおいて、ユーザーが直接触れる部分、つまりインターフェース(クライアントサイド)の機能を開発し実現させることです。

業務

このロールで手がける主な業務は、以下のようなものです。

  • ユーザーのニーズを理解し、顧客体験を向上させるためのソフトウェアをデザインし実装する

  • 必要に応じてプロトタイプを作りながら、ユーザーのフィードバックをもとに、インターフェース(クライアントサイド)の機能を中心に開発・実装する

  • サービスの運用が始まった後に受けるユーザーからのフィードバックをもとに、ソフトウェアの改善・改良を実施する

スキル

このロールを担うためにとりわけ必要だと考えられているのは、以下の分野に関するスキルです。

スキル項目

内容

コンピュータサイエンス

ソフトウェア開発において求められるデータ構造やアルゴリズムなどに関する能力

チーム開発

チームでのソフトウェア開発の生産性を高めるために必要となる能力

ソフトウェア設計手法

目的に沿ったソフトウェアを実装するためにデータ構造や内部アーキテクチャを検討し設計に落とし込む能力

ソフトウェア開発プロセス

ソフトウェア開発において開発計画や品質などを管理する能力

Webアプリケーション基本技術

Webアプリケーションの設計・開発に必要となる基本的な能力

フロントエンドシステム開発

ユーザーに対して直接の接点となる画面を設計・開発する能力

バックエンドエンジニア

次に、バックエンドエンジニアとしてのロールを担うために不可欠とされる責任・業務・スキルを順番に紹介します。

責任

このロールが担う責任は、デジタル技術を利用したサービスで、主にサーバサイドに関わる機能の開発と実現を担うことです。

業務

このロールで手がける主な業務は、以下のようなものです。

  • ユーザーのニーズを理解し、顧客の課題を解決するうえで正確かつ信頼性の高いソフトウェアを設計し実装する

  • 必要に応じてプロトタイプを作りつつ、ユーザーからのフィードバックをもとにサーバサイドの機能を中心に開発する

  • サービスが運用される際に得られるユーザーのフィードバックをもとに、ソフトウェアの改善や改良を行う

スキル

このロールを担うためにとりわけ必要だと考えられているのは、以下の分野に関するスキルです。

なお、「コンピュータサイエンス」「チーム開発」「ソフトウェア設計手法」「ソフトウェア開発プロセス」「Webアプリケーション基本技術」「フロントエンドシステム開発」については、フロントエンドエンジニアと重複しているため省略しています。

スキル項目

内容

バックエンドシステム開発

ユーザーの目に見えないサーバサイドの機能を設計・開発する能力

クラウドインフラ活用

クラウドサービスを利用しシステムインフラを構築・運用する能力

クラウドエンジニア/SRE

続いて、クラウドエンジニア/SREとしてのロールを担うために不可欠とされる責任・業務・スキルを順番に紹介します。

責任

このロールが担う責任は、デジタル技術を利用したサービスにおいて、ソフトウェアの開発と運用環境を最適化し、サービスの信頼性を高めることです。

業務

このロールで手がける主な業務は、以下のようなものです。

  • ユーザーのニーズを理解し、それらを満たすためのソフトウェアの開発と運用環境を構築する

  • 他のソフトウェアエンジニアからのフィードバックにもとづき、運用環境を改善し最適化する

  • サービスが運用されている間、継続的にモニタリングを行い、その結果にもとづいてサービスの信頼性を向上させるためのシステム・ソフトウェア面の対応を行う

スキル

このロールを担うためにとりわけ必要だと考えられているのは、以下の分野に関するスキルです。

なお、「コンピュータサイエンス」についてはフロントエンドエンジニアと、「クラウドインフラ活用」についてはバックエンドエンジニアと、それぞれ重複しているため省略しています。

スキル項目

内容

SREプロセス

開発と運用が協力し、リリースサイクルの向上とサービスの安定を目指す能力

セキュリティ運用・保守・監視

デジタルサービスをセキュアに運用するための保守と対策を適切に実践するための能力

セキュリティに関する監視やインシデントの原因究明などを適切に実践するための能力

フィジカルコンピューティングエンジニア

最後に、フィジカルコンピューティングエンジニアとしてのロールを担うために不可欠とされる責任・業務・スキルを順番に紹介します。

責任

このロールが担う責任は、デジタル技術を活用したサービスを提供するためのソフトウェア実現に関して、現実世界(物理領域)のデジタル化を担いつつ、デバイスを含めたソフトウェア機能を実現させることです。

業務

このロールで手がける主な業務は、以下のようなものです。

  • ユーザーのニーズを理解し、顧客体験を向上させるために、様々なデバイスを含むソフトウェアを設計し実装する

  • 物理的なデバイスを利用して、データの収集や現実世界への作用をもたらすソフトウェア機能を開発する

  • 必要に応じてデバイスを含むプロトタイプを作成し、ユーザーからのフィードバックに基づいてソフトウェアの機能を実装する

  • サービスが運用されている際に受けるユーザーのフィードバックをもとに、ソフトウェアの改善や改良を行う

スキル

このロールを担うためにとりわけ必要だと考えられているのは、以下の分野に関するスキルです。

スキル項目

内容

フィジカルコンピューティング

センサー、ロボットや既存機器のIoT化などにより物理的な事象をデジタル化して扱う能力

まとめ

本記事では、DXを推進する中心的な人材の1つである「ソフトウェアエンジニア」について、役割や業務内容、必要なスキルなどを解説しました。

DX推進スキル標準におけるソフトウェアエンジニアは、デジタル技術を活用した製品・サービスを企画・構想段階から形のあるものへと具現化していき、DXの成果や価値を具体的な技術を通じて生み出すうえで重要な人材です。とはいえ、こうした人材は簡単に見つかるものではありません。

人材の確保にあたっては、採用に頼るだけでなく、社内・社外での研修・教育ツールなどを通じて育成していくことが効果的です。まずはソフトウェアエンジニアを含め、自社のDX推進にはどのような人材が求められるのかを明確に定義するところから始めましょう。

弊社では『SIGNATE Cloud』というデジタルスキル標準に完全対応で、DXスキルアセスメントから自社ケースの実践まで、学びと実務が一体となった教育プラットフォームを運営しています。

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